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地域づくりとソーシャル・キャピタルの醸成

2019年02月12日 代表メッセージ

地域づくりにおいて語られることが多い「ソーシャル・キャピタル」。一般的には、“社会関係資本”と呼ばれ、物的資本(フィジカル・キャピタル)や人的資本(ヒューマン・キャピタル)などと並ぶ概念とされています。

米政治学者ロバート・パットナムは、ソーシャル・キャピタルを「人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を改善できる、信頼、規範、ネットワークといった社会組織の特徴」と定義しており、グループや組織内で相互の信頼が高いほど取引きや交渉などが不要とな り、自発的な協力関係が生まれるため、成果を実現する際の効率が高まるとされています。分かりやすく言うと、地域における人と人、住民同士のつながりによって安心感や充実感が高まり、人々の生活が豊かになるということです。

こうしたソーシャル・キャピタルの醸成が、地域の安全や安心、高齢者の住みやすさ、子育てのしやすさ、健康の増進、教育水準の向上などに寄与するという調査結果もあります。内閣府が2003年に発表した報告書では、ソーシャル・キャピタルが国民生活に影響を及ぼす可能性が紹介されていますが、ソーシャル・キャピタル指数と刑法犯認知件数および合計特殊出生率との相関関係を都道府県別に分析した結果、ソーシャル・キャピタルが豊かな地域ほど、犯罪率は低く、出生率は高いことが明らかになっています。

昨年12月23日に山口県山口市の阿東(地福)で開催された地域の風物詩、『クリスマスナイトフェスティバル』はまさにこのようなソーシャル・キャピタルを世代を超えて紡いでいくためのイベントといえるでしょう。メインの出し物は、阿東地域交流センター地福分館にある2本のもみの木(約26mと22m)を約5万個のLEDで飾った巨大クリスマス・ツリーですが、毎年、地元住民による様々な手作りイベントが催されています。

屋外でのイベントは、25周年を記念した手作り感満載の動画から始まり、クリスマス・ツリーの点灯、そして地元中学生の音楽演奏などに続いていきます。ここまではどこにでもあるような出し物ですが、婦人方がセーラー服と学ランを着て踊るダンスや、地域とは関係の無さそうな(!)着ぐるみ人形と子どもたちのダンス(同じ曲で3回!)、地福地域のテーマソング熱唱、さらにはサンタクロースによる餅まき、クリスマスツリーと花火、20人が当選する大抽選会へと流れ込み、季節感もテーマ性も感じられない、狂喜乱舞へと変わっていきます。

このイベントは地域の子どもたちが“お客様”であり、地域の大人が本気で“おもてなし”をします。大人は、子どもの満足度を最大化するために、そしてこのイベントをつうじて様々な地域住民のつながりを醸成するために、誰に、どのような役割や出番が担ってもらうのが良いのかを長い時間をかけて議論しながら上述のような素人による出し物を企画し、集客や当日の会場設営、安全面の管理などを行います。

こうした地域のイベントでは、安易に有名人を呼んで短期的な集客数の獲得を目指したり、運営をそのものを専門業者に外注したりしがちですが、これではソーシャル・キャピタルを育むためのせっかくのイベントの機会が十分に活用されたとはいえません。地域におけるイベントや行事の本当の価値は、世代や地域を超えた交流によるつながりの醸成であり、個々人の地域における役割や出番を用意することで、お互いの存在価値や魅力を再確認する絶好の機会となるということです。

この『クリスマスナイトフェスティバル』は今回で25年になるイベントですが、かつてイベントに参加していた子どもたちが成長してイベントを支える側に回っています。イベントを支える側も参加する側もその意味を理解しているからこそ、25年の長きにわたって継続されているのです。

日本では少子高齢化が進んでいますが、人の数が減り、出会い・交流の機会も減少するた め、こうした人々のつながりや協力関係が日々希薄化・劣化しています。まずは、これまで漫然と行ってきている地域のイベントや行事を見直しながら、ソーシャル・キャピタルの“”がどこにあるかを探すところから始めてみましょう。