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山口市役所職員向け『協働によるまちづくり研修』

2019年07月31日 事業レポート

山口市役所の入職2年目と4年目の職員向けに『協働によるまちづくり研修』を行いました。

山口市では、平成20年に制定された「山口市協働のまちづくり条例」のもと、個性豊かで活力のある自立した地域の実現に向けて、地域づくり協議会を中心として、多様な主体が参画し、連携、協力して、社会課題や地域課題の解決を継続的に図る協働によるまちづくりを進めています。

この研修の目的は、協働によるまちづくりの担い手である市職員が自らの役割を理解し、当事者として「共に話し、共に汗をかく」10年後の地域づくりの姿を描きながら、課題解決や地域の活性化に向けた地域経営の方法を学ぶことです。

冒頭に、研修会場となった山口情報芸術センター(YCAM)からアーチストとの協働について事例を紹介いただきました。YCAMでは、“ともにつくり、ともに学ぶ”を掲げていますが、これまでに「子どもパビリオン」や「コロガル公園」など、地域住民の参加によるクリエイティブなイベントを手掛けています。研修当日は休館日ということで一般開放はされていませんでしたが、ともすると堅苦しくなりそうな行政研修に非日常とクリエイティブな要素を持ち込めたのではないかと思います。

協働を体感するアイスブレークからはじめ、「山口市協働のまちづくり条例」と「第二次山口市協働推進プラン」についてクイズ形式で学んでもらいました。

協働推進プランについては、“地域を思い、人々が集い 行動する「地域経営」へ〜共に話し、共に汗をかく〜”というビジョンのもとに設定された4つの基本施策を確認しました。そのうえで、このビジョンに対して、職員それぞれがどのようなイメージを持っているのかをお互いに確認するために、絵に描いてもらいました。行政職員の場合は特に、普段の仕事で文字や言葉を中心とした会話や資料づくりが多く発生しますが、文字や言葉だけで本質的な部分を伝えたり、理解したりすることはできません。こうして普段と違う感覚(今回は視覚)を活用することで、「なるほど、あなたはそういうふうに協働を捉えているのですね」という相互の理解度や違いの認識ができます。協働が進まない要因の一つに、頭だけで理解しようとすることの限界があるように思います。

協働の最新事例紹介として米国のコレクティブ・インパクトについて紹介した後には、協働推進プランにある4つの基本施策を素材として地域課題の解決に向けた問題構造の整理と対策の立案を行いました。協働が進まない別の理由として、関係者の間で現状に対する理解がバラバラであることがあげられます。それぞれの立場や都合を前提とした場合、そこから出てくる主張はその人たちにとっては疑いのない事実であり、真実であり、正しいわけですが、あくまでも1部であり、全体を表しているわけではありません。地域課題の解決に向けて協働を進めていくためには、まずは課題の実態に対する認識合わせが不可欠です。スタートがズレていると、プロジェクトを進めるにつれてそのズレはますます乖離し、最後は空中分解してしまうのです。

また、対策を考えるとなると、いきなり対策アイデアを列挙しがちですが、まず行うべきは問題の構造を「なぜ?なぜ?」と問いかけながら深堀りしていくこと。裏を返せば、この作業の意味は、対策の究極の目的は何かということを関係者間で明確にするということにあります。そして、深掘った先にある課題の“真因”が突き止められたら、そこから具体的な対策アイデアへと展開していきます。さらに、対策に優先順位をつけ、どの対策が目的を達成するのに最も適切なものであるかを評価していきます。

最後は、“市民と行政の協働で山口市の地域課題を解決する!”という問いに対し、参加者の皆さんの持つエネルギーの度合いをお互いに体感してもらいました。この問いに対して現在の自分はどのくらい行動できているか、それに対して今後はどう行動していきたいかを明らかにしつつ、現在と今後とのギャップを埋めるために必要な個人の意識や行動の変化や職場などの環境面でのサポートなどについても話をしてもらいました。

終了後のアンケートでは、「言葉では知っていたが、協働の本当の意味が分かった」「協働に対する理解が体感的に深まった」などのコメントを多くいただきました。今回は入職2年目と4年目という比較的フレッシュな職員が対象でしたが、政策づくりの中枢にいるベテラン職員にとっても、協働の意味をあらためて問い直すような機会が必要ですね。