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社会課題の解決と協働促進に向けた『システム・コーチング®』

2019年09月19日 代表メッセージ

多様な主体による社会課題解決への取り組みであるコレクティブ・インパクトが日本で紹介されてから、ここ何年かめっきり耳にする機会が減った「協働」があらためて注目されています。

その背景には、社会課題の構造は複雑であり、従来のように問題を要素分解して原因を取り除くようなアプローチではうまくいかないということ、そして単独の主体によって解決できるものではないということ、だからこそそれぞれが持っている強みを相互補完的に活かし合う必要があるという認識が強まってきていることがあるでしょう。

一方で、一つの社会課題を取り上げても、関係者は多岐にわたり、その関係者ごとに当該社会課題の背景や経緯、問題の構造、解決策などに対する認識は異なっていることが大半で、関係者が増えれば増えるほど認識のズレも大きく、複雑になっていきます。

協働を推進していくためには、関係者それぞれの認識合わせをしなければならず、対話の機会を用意し、相互理解に基づいたコミュニケーションを図る必要があります。しかしながら、実際にはそれぞれの立場や主義主張を丁寧につむぎながら合意形成を行なうのは至難の業で、協働プロジェクトを始めたとしても途中で空中分解してしまうことも稀ではありません。さらにいうと、「あいつが嫌いだ!一緒にやりたくない!」といった感情レベルで反目し合い、そもそもプロジェクトが立ち上がらない、停滞して進まないという経験をされた方も多いのではないでしょうか。こうした多様性の受容力や相互理解の不足により、協働が進まない、頓挫する、そもそも取り組みたくない、という状況が発生しているのです。

 

 

この状況を変えていくためには、協働プロジェクトの関係者間、さらには関係者の組織内部における関係性を整えていかなければなりませんが、1つの有効なツールとして『システム・コーチング®』があります。ここでいう“システム”とは、「共通の目的や独自性(アイデンティティ)を持った相互に影響を受け合う人びとの集まり」のことを指します。

システム・コーチング®は、1対1の個人コーチングとは違い、2人以上の人によって成立する関係性を対象としており、夫婦関係や友達関係、組織内の部門やプロジェクト、地域コミュニティ全体など、複数の人間関係を1つの”システム”として捉え、関係性の改善に向けて働きかけます。つまり個別の一人ひとりの立ち振舞に意識を向けるのではなく、システム全体としてみてどういう関係性にあるかをシステム内のメンバーが気づき、お互いの関係性はどうあるべきかを全員で模索していきます。チームビルディングの手法と思ってもらえれば分かりやすいかもしれません。

 

 

異なるセクターの人と仕事しても意見が全く噛み合わない。。。
関係者のモチベーションやコミットメントに温度差がある。。。
「違い」は邪魔なものとみなされ個々人の力が発揮されていない。。。
事業は魅力的だけど人間関係が悪い。。。
メンバーはエース級が揃っているけど全体としてのパフォーマンスが低い。。。
決めた計画が言い訳ばかりで実行されない。。。

 

などなど、組織やプロジェクトの中ではよくあること。しかしそこから勇気を持って一歩進み、お互いの関係性の中で何が起きているかに目を逸らさずに向き合うことから、組織内の風土やチームワークなども育まれていきます。その結果として、事業の成果も生み出されるのです。

MITのダニエル・キム教授の「組織の成功循環モデル」でも、関係の質が高まることで結果の質も高まることが提唱されています。順番が大事で、関係の質ありきで結果はそれに伴うということです。またこのことは、チームメンバーがリスクを取ることを安全だと感じ、お互いに対して弱い部分もさらけ出すことができることが効果的なチームに最も影響を与えている要素だと明らかにしたGoogleの「心理的安全性」ともつながる話ですね。

 

 

社会課題の解決や地域づくりにおける協働プロジェクトでは、行政、NPO、財団、企業、教育関係者、福祉団体、地縁組織(自治会・町内会・協議会など)、市民(住民)など、まさに多様な主体が関わっています。システム・コーチング®では、組織内部の関係性のみならず、これら複数の利害関係者の立場や主張、想いや願い、不安や不満、恐れや痛みなどを頭や机上で理解するのではなく、ワークショップ形式で体感的に気づき合い、辛抱強く対話を重ね、具体的な行動を実践していくことを促していきます。

<システム・コーチング®で行なうワーク(例)>

・関係者が集まった場のエネルギーや熱量を可視化し、対話する
・異なる立場の人がそれぞれ大切にしているものや価値観を体感的に理解する
・関係性に内在する役割や立場が持つ影響力と相互作用を探求する
・自分と他者の想いをビジュアル化し、ビジョンや計画づくりを行なう
・関係性におけるコミュニケーションの毒素を見える化し、対処する
・見逃されがちな少数意見や“声なき声”に気づきながら、何が起きているかの共通理解を図る

 

システム・コーチング®の導入効果としては、以下のようなものが挙げられます。

(1)本当のことが共有されるようになり、全体最適な意思決定が行えるようになる
(2)組織の心理的安全性が増し、仕事の中心が自己保身活動から価値創造活動にシフトする
(3)与えられた役割からではなく、役割を超えた自律的な活動が当たり前になる

 

 

 

民間企業ではProfit Driven(収益志向)の経営が一般的ですが、NPOをはじめとするソーシャルセクターではVision/Mission Driven(ビジョン/ミッション志向)で組織が動いていきます。お金や待遇などの金銭的報酬が働くモチベーションの一番目ではなく、目指す社会の実現に向けたやり甲斐や生きがいがモチベーションであるだけに、関係性の質を高め、維持し続けていくことは死活問題でもあります。

残念ながら、こうした前提と逆行するように、多くのNPOでは慢性的な資金不足や人材不足により、事業計画や戦略づくり、マーケティングやファンドレイジング、IT活用などの「事業開発」に投資の目が向きがち、優先されがちです。今後は、その事業を回していく人と人との相互作用や関係性の構築・改善を行なう「組織開発」にも意識を向けていかなければ、ミッションを達成し、ビジョンを実現するチーム(システム)を作り上げることができません。

 

□代表の想いが強すぎて周りがついていけない。。。
□現場スタッフとバックオフィススタッフの意識の乖離が大きくて双方妥協しない。。。
□プロボノが手伝ってくれるのはありがたいけど企業の価値感を押し付けられる。。。
□無償のボランティアと何をどこまで共有するのか悩ましい。。。
□聞く耳をもたない長老がいて地域づくりが進まない。。。
□高齢者と若者の間でなかなか世代交代が進まない。。。

 

などなど、思わずハッとした方は是非ご連絡ください(笑)
システム・コーチング®は西洋医学のように即効性はありませんが、漢方薬のようにじわりじわりと効果が現れていきます!

 


システム・コーチング®についてより詳しくお知りになりたい方は、CRR Global Japanのホームページを御覧ください。

https://crrglobaljapan.com/