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そのチラシ、本当に届けたい人に届いていますか?——ペルソナで変わる自治体広報

2026年10月11日 事業レポート

今年1月の開催に続き、年内2回目となる行政管理講座、『住民の行動を促す自治体施策の実践 〜ウェルビーイングと5つの実践ステップによる行動デザイン〜』(一般社団法人日本経営協会主催)に登壇しました。

当日は、拙著『公務員のためのマーケティング講座: 成果を最大化する政策・施策・事業づくり』の内容をベースに講義と個人ワークを交互に組み合わせながら実施。インプット直後に自分の担当業務に引き寄せて整理を行うことで、その場で理解を深めていただくことにもつながったようです。

マーケティングと聞くと、「そもそもマーケティングって企業の話だよね?」「お金儲けの話でしょ?」となりがちですが、まずは公務員にとってのマーケティングについての解説から始めていきました。企業の製品を購入したり、サービスを利用したりするのも一つの行動に過ぎません。企業の側からすると、そうした行動を促すために情報を提供して製品・サービスの存在を知ってもらい、そこから意識や行動の変容を促していくことこそが企業活動です。自治体でも基本的な考え方はこれと変わりません。自治体側が実施する事業・施策・政策には意図があり、その意図を実現するためにターゲットとして設定した地域内外の住民や事業者の意識や行動変容を促すような働きかけをしていきます。その際、自治体の都合や主張ばかりを押し付けてもうまくいきません。あくまでもターゲット起点で働きかけをしていかなければ、自治体が期待している成果を生み出すことはできません。

 

 

続いて、「誰に・何を・どのように届けるか」を明確にする5つのステップ(ビジョン設定、ターゲット設定、行動変容設計、5C分析、指標設計)の解説に多くの時間を投じ、ターゲット起点で成果を生み出すための実践的アプローチを学んでいただきました。ともするとマーケティングの研修では概念や雰囲気だけを理解して終わってしまうこともありますが、自治体の担当者の皆さまが実際に日々の業務で実践するための具体的な内容を5つのステップに分解してお伝えしました。

 

 

今回の講義の中では、書籍でも取り上げている「移住定住の促進」を事例として解説していきました。ターゲット設定のパートでは、具体的にペルソナをどのように使っていくのかという事例として、チラシの作り方について解説(下図)。左側は、ターゲット(ペルソナ)を意識せずに自治体起点で作った場合の、どこででも見かけるようなチラシのイメージです。当該地域の風景画像も盛り込まれており、一見すると”それなり”には見えるチラシですが、提供されている情報はすべて自治体の一方的な想いや思い込みによるものです。これだと、すでに当該地域への移住を決定している人以外、この内容に魅力を感じて移住を検討する人はあまりいないのではないでしょうか?

一方で右側がペルソナを意識したチラシです。ここで記載されている内容は、講義の前段階で紹介したペルソナの具体的な人物像(3人家族)を元にしたものなのですが、使用されている画像からキャッチコピー、説明文など、設定したペルソナにぴったりとマッチしたものになっています。もしこのチラシをペルソナとして設定した人が見たとしたら、どちらのチラシへの反応が良いかは言うまでもありませんね。

 

 

このことを実際に検証するためにも、スプリットラン・テスト(ABテスト)を実施することをお奨めします。広告やマーケティング施策の効果を比較するために、対象者を分けてそれぞれ異なる広告や表現を提示し、どちらがより高い成果を生むかを検証する方法です。簡単にいえば、「AとBのパターンで、どちらの伝え方が効果的なのか」を実際に試して確かめる手法です。このチラシの例では、QRコードの読み取り率(HPへのアクセス数)、移住相談への電話/メールでの問い合わせ数、相談申し込み者数、相談会への参加者数/率、移住の決定件数/率などを効果を判断する指標として設定することができます。この意味においても、スプリットランテストは、EBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)の一環として行うものと位置づけてよいでしょう。

このセミナーへの参加者限定特典として、「民間企業経験者の中途採用」と「滞納者の納税促進」についてもご紹介しました。マーケティングというと、どうしても企業における経済活動や売上や利益を上げるためのテクニックだと受け取られられがちですが、前述のとおり、「ターゲットの意識や行動の変容を促すための取り組み」と位置付け直すことで、公務員が抱える様々な行政課題を解決することができます。

 

 

今回も、日本経営協会様のある新宿駅すぐの高層ビルにて実施。仕事がら、いつもはお世辞にも立派とは言えない(!)公共施設でこうしたセミナーや研修を行うことが多いのですが、研修やセミナーといった無形のサービスこそ、こうした目に見え、体感できる要素がサービスの品質をターゲットに間接的に伝える鍵となります。マーケティングでは「物的環境」といいますが、講師のテンションが上がるという効果もありそうですね!