BLOGブログ

地域づくりに求められる協働コーディネーション力

2020年03月10日 事業レポート

2月22〜23日の2日間にわたって開催された『全国ボランティアコーディネーター研究集会(JVCC)2020東京』で、『Connection(繋がり)をCollaboration(協働)へ!〜課題を共有し、互いの強みを活かした新しい協働のカタチを学ぶ〜』と題する分科会に登壇しました。

 

 

JVCCは、ボランティアコーディネーションに携わる人が、全国からその活動分野を問わずに集い、活動分野や立場を超えて活発な議論や対話を行い、知識や技術を磨くことのできる集会です。

参加者の募集開始早々に定員となったのですが、当日は、社会福祉協議会ボランティアセンターや市民活動支援センターなどの中間支援組織、大学ボランティアセンター、NPOなど、地域で協働のコーディネーション実務を担っている方の参加が大半でした。

冒頭のアイスブレークでは、A4コピー用紙を折って高く積み上げる『ペーパータワー』を実施。まずは、本分科会のテーマである“協働”を体感してもらいました。たかだか5分程度のワークですが、作業の進め方や出来上がりのゴールイメージに対して自分の考えやアイデアを十分に伝えられなかったり、一部の人が半ば強引に意見を通して作業を進めたりという、“協働あるある”をプチ体験してもらいました。

 

 

続いて、日本でも注目されている、共通の課題に対して互いの強みを活かしあう新しい協働のあり方、「コレクティブ・インパクト」について講義型式で情報提供しました。

VUCA(Volatility[変動性]、Uncertainty[不確実性]、Complexity[複雑性]、Ambiguity[曖昧性])の時代といわれる現在、過去に先行事例があるわけでもなく、他地域に先進事例があるわけでもありません。これをやればいいという答えがない中、複雑な課題を解決するためには、既成概念に囚われず「まずはやってみる!」くらいの姿勢が必要です。

日本と米国で文化や宗教、歴史、法制度など社会的な背景が違うのは言うまでもありませんが、そのうえで日本でも取り入れるべき視点やノウハウは積極的に採用していくべきです。「アメリカの事例だから日本には当てはまらない」などと言っている場合ではありません。

 

 

そして後半では本分科会のメインでもある『システム・コーチング®』を体験してもらいました。システム・コーチング®は、1対1の個人コーチングとは違い、2人以上の人によって成立する関係性を対象としており、夫婦関係や友達関係、組織内の部門やプロジェクト、地域コミュニティ全体など、複数の人間関係を1つの”システム”として捉え、その関係性の改善に向けて働きかけます。この分科会のテーマは協働ですが、人間関係にとどまらず、組織やセクターを超えた協働に向けた関係性を取り扱うのには非常に有効な手法といえます。

協働がうまくいかない大きな要因として、関係者の間でかたちとして分かりやすい事業計画、実行体制、スケジュール、予算、目標/指標などの“事業”の側面が重視されがちで、その事業を実施する“人の関係性”にあまり意識が向いていないために事業が頓挫してしまうということがあります。異なる主体がそれぞれの強みを出し合いながら実践するのが協働ですが、異なる主体にはそれぞれの立場や都合というものがあります。お互いがそれらを主張し合って引かない、足を引っ張り合う、さらにはうまくいかなくなると責任を押し付け合う、という状態が続いているうちは、協働の関係は構築できません。

それらの背景にある想いや願い、不安や痛みなどを分かち合いながら共通のゴール(北極星)を掲げ、向かって行けなければ、かたちだけの協働作業に終わり、その先にある社会課題の解決という成果をもぎ取ることはできません。そのためにも、頭で理解する言語や思考によるコミュニケーションではなく、視覚や体感覚などにまで落とし込んだコミュニケーションにより身体の深い部分でお互いを理解しなければ、既成概念や硬直した人間関係から開放されることはなく、結果として協働は失敗に終わります。

今回は、「多様な主体による協働で共通のゴールを達成する」という問いかけに対する参加者の皆さんの想いや行動のエネルギーをお互いに確認し合ったり、「協働を実践するにあたって必要なメタスキル(あり方)」について自分の現状と今後について体感的に見つめ直すようなワークを実施しました。

 

この分科会を通して、地域福祉や地域づくりの分野においては、協働のポジティブな面よりもネガティブな面に対峙することの方が現実としては多く、協働がなかなか進まないという実態が垣間見えました。日々、自分の立場や都合だけを主張する関係者とのコーディネート業務に向き合うなかで、協働担当者は、自分が抱える悩みや辛さを周りに分かってもらえず自分の中に抱え込んだまま疲弊されているということを再認識しました。

この分科会での体験や学びが、少しでも協働を推進していくヒントになれば嬉しく思います。

 

※システム・コーチング®についてより詳しくお知りになりたい方は、CRR Global Japanのホームページを御覧ください。

https://crrglobaljapan.com/