BLOGブログ

地域企業のCSRと『スマイル日光プロジェクト』

2019年11月21日 事業レポート

■スマイル日光プロジェクトとは?

スマイル日光プロジェクト』は、栃木県日光市内で事業を行う地域企業が“本業”に加え、“お金”と“専門性”の提供を通して地域社会に貢献するというCSRプロジェクトです。参加企業数は2019年10月現在、28社で、印刷会社、弁当屋、酒店、呉服店、タクシー会社、農園など多岐にわたっています。

プロジェクトの推進は、日光市、日光市社会福祉協議会、日光商工会議所の3者からなる日光CSR推進連絡会が担い、2014年9月から約半年間のテストマーケティング期間を経て現在に至っています。代表)長浜はアドバイザーとしてプロジェクトの立ち上げ当初からサポートをしています。

 

 

CSRCorporate Social Responsibilityの略で「企業の社会的責任」のこと。日光のCSRでは、以下の5つを定義として掲げています。

(1)企業のファンを増やすこと
(2)地域において企業が存在することが大切
(3)地域の一員として地域とのつながりがあること
(4)企業の役割として地域課題の解決に目を向けること
(5)コストではなく戦略的な投資であること

 

 

■お金による地域貢献:寄付つき商品プロジェクト

プロジェクト開始当初から実施しているのが『寄付つき商品』の販売。各企業ごとに特定の商品を選定し、その売上に応じた寄付金が日光市内で活動している様々な団体やプロジェクトなどに寄付されるという仕組みです。寄付金額の目標はあれど、ノルマは設定しておらず、参加各社が自社のできる範囲で自由に商品企画を行ない、寄付金を集めることができます。

<寄付つき商品の事例>

・注文を受けた名刺の売上の5%
・日本酒1本につき100円
・オイル交換1回につき100円
・新築及びリフォームの際の古材の再利用1㎥につき5,000円
・子育て/UDタクシーのご利用1回につき50円        など

寄付先の分野としては、以下の4つを対象としています。

①すべての人が安心して暮らせる社会をつくる団体を応援します。
→高齢者および生活困難者(障がい者、貧困層)等の支援
②子どもを産み育てやすい環境、子どもが生き生きと生活できる環境をつくる団体を応援します。
→子育て世代、子どもの生活支援、若者の社会貢献活動等の支援
③市民が快適に住み暮らすことのできるために環境保全団体を応援します。
→環境保全団体等の支援
④災害が起こった際に助け合える関係の構築を応援します。
→災害義援金、災害復旧復興活動支援金等の支援例えば、以下のような寄付企画があります。

第5期の2018年4月~2019年3月では合計948,759円の寄付金が集まりました。これまではプロジェクト側から寄付先を探して寄付をするという流れでしたが、昨年から公募制に変更。今年度は6団体からの申請があり、最終的に総額50万円を以下の団体に寄付をすることになりました。

①きらきら保育園(¥100,000)
②特定非営利活動法人だいじょうぶ(¥100,000)
③一般社団法人ミニヨンズ日光(¥30,000)
④特定非営利活動法人和音(¥93,000)
⑤特定非営利活動法人楽ッ子の会(¥77,000)
⑥キリフリ自然学校(¥100,000)

 

 

毎月定例の進捗共有会を開催しており、プロジェクトのビジョンやゴールの確認、各社の販売実績やノウハウの共有、新規事業やイベントの検討を行いながら参加企業のモチベーションの維持を図っています。

 

■専門性による地域貢献:プロボノプロジェクト

寄付つき商品の販売が日々の業務の中で徐々に仕組み化されてきた3年目には、参加企業の代表者が自ら地域に入り込んで、それぞれが持つ専門スキルを発揮する『プロボノ』を新たに開始しました。

プロボノとはラテン語で“公共善のために”という意味ですが、単純作業を行うことが多いボランティアと違い、高い専門性を提供するという特徴があります。直接地域の人たちと接するため、寄付つき商品では味わえないような楽しさや緊張感があります。具体的な取り組みとしては以下のようなものがあります。

・防災の専門知識を持っている常務が、NPOが運営するコミュニティカフェのイベントで防災についての講義や月1回行われている『防災カフェ』のファシリテーション

・弁当屋の社長が子どもの貧困に関するイベントでのNPOの皆様と大鍋づくりを指南

・呉服屋の専務が障がい者イベントで茶道体験を実施

・種苗店の社長が小学校にお邪魔し、ゲームやクイズを交えた野菜や植物の知識と共に、なぜ今の職業を選んだのかといった自分の将来について考える機会を提供

 

 

 

■本業を通じた地域貢献:SDGsへの取り組み

スマイル日光プロジェクト』では、CSRに馴染みの無い企業にとっての入り口として、本業の売上に直結する寄付つき商品から始め、プロボノを加えていきました。

現在ではさらに、2015年9月の国連サミットで採択された『SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)』に掲げられた17の目標に対して、各社それぞれが本業を通じてできる取り組みを進めています。

 

 

■プロジェクトの特徴

スマイル日光プロジェクト』の特徴の1つ目は、”地域密着”であるという点です。寄付つき商品の販売やプロボノによる直接的な支援や地域イベントへの参加など、地域の人や団体と顔の見える関係性を構築することを意識してきました。参加企業にとっては、事業を行っている地元に愛されなければ意味がありません。つまり、商品を購入していただくお客様として、また、将来、社員になってくれる候補者に向けて、地元の課題に取り組み、地域に愛される存在になることは不可欠なのです。

2つ目が、1社だけで実施するのではなく、複数の企業が共同で取り組んでいる点です。大企業と違い地域企業においては、複数の企業が共同で取り組むほうが効率・効果が高まります。個々の企業の寄付を足し上げることで金額も大きくなり、企業同士の競争心も育まれ、ノウハウを学び合うことができるといったメリットをもたらします。また、複数で取り組むことで露出効果も高まり、地元メディアにも何度か取り上げられています。さらには、プロジェクトに参加した企業は共通デザインの幟やポスター、チラシを使用したり、共同でイベントに出展するなど、コストや負担を分け合うことも可能になるのです。

3つ目としては、プロジェクトを先導する旗振り役がいるということがあげられます。このプロジェクトでは、株式会社成文社の常務取締役)小栗卓さんがリーダーシップを発揮しつつも、参加企業の意見やアイデアを汲み取りながらファシリテーションを中心としたプロジェクト運営を行っています。このプロジェクトへの参加はあくまでも自由意志に基づくものであり、前述のとおり、各社ごとのノルマなどは設定していません。だからこそ各社の自発性を引き出し、モチベーションを維持するようなソフトなリーダーシップが有効なのです。

 

* * *

 

2019年10月には、参加メンバーの意識や知識、関わりの思いの強さなどにも差が出てきていることもあり、これからのプロジェクトのあり方を探ることを主眼とした『システムコーチング』を実施しました。

お互い心の中にある思いや考えをいつも使っている思考や言語でなく、心や感覚のレベルまで深く潜って対話しながら、今後に向けたチャレンジや心配事などを共有しました。

プロジェクトが立ち上がってから、かれこれ5年が経過。そしてこれからもプロジェクトの挑戦は続いていきます!