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地域づくりの設計図を描く実践講座 in 島根③

2025年12月22日 事業レポート

12月21日(日)、島根県大田市にて第3回目(全3回)となる「地域づくりの設計図を描く実践講座 〜対話・ビジョン・計画作成の基本を学ぶ〜」講座を行いました。

最終回の今回は、前回作成した、団体の目指す地域の姿であるビジョンの実現に向けた事業と成果創出の流れをロジックモデル(地域づくりの設計図)に描いてもらいました。

具体的なワークに入る前に、まずは具体抽象を行き来するミニワークを実施。ロジックモデルは文字通り、ロジックに基づいて論理的に納得感のある成果創出の流れを描くものです。そのためにも、団体メンバー間で議論する際に、自分は、そして自分たちは、どの論理階層(レベル)で議論をしているのかをお互いに確認し合いながら、認識や作業にズレがないようにする必要があります。地域づくりの話し合いの場でよく起こるのが、具体的なイベントの内容を話している人と、イベントを含め、取り組む活動内容のそもそもの目的やゴールを話している人との議論の階層がズレてしまっているようなケースです。お互いに階層のレベルを合わせないと話が噛み合わず並行性をたどり、フラストレーションが増すばかりです。

 

 

冒頭で、事例を交えてあらためて地域づくりの設計図について解説した後は、約2時間にわたり、個々の団体ごとに設計図を作成するワークを行ってもらいました。その間、自分は参加団体全てと個別の壁打ちです。1団体の持ち時間が約4分(!)という限られた時間の中で、作成してもらった設計図を眺めながら休みなく入れ替わり立ち替わり高速でレビュー。アドレナリンが出っ放しでしたが、一方的な講義と比べて、参加団体の皆さんが作成されたリアルな設計図を元にやり取りをするのは楽しいものです。

設計図の作成においては、「結果」と「成果」の違いを理解することが重要です。結果は“自分たちがやったこと”で、成果は“相手に起こった変化”です。漢字で書くと1文字しか違わないのですが、その意味するところには大きな違いがあります。計画づくりもその振り返りも、ともすると自分たちのやったことだけに意識がとどまり、その先に現れる相手の変化(成果)に対する意識はおざなりになってしまいます。しかし、相手の変化こそが事業の価値。この点が明確でなければ事業の受益者(参加者、利用者、購入者など)や支援者(仲間や資金提供者など)が増えず、勢いよく始めた事業も徐々に停滞していきます。

このことを踏まえ、成果を明確にイメージしようとすればするほど、そもそも誰を対象とした事業なのかという「ターゲット」の明確化に行き着きます。逆にいうと、ターゲットが明確でなければ、成果である、そのターゲットの意識や行動の変容が描こうにも描けないということです。とかく地域づくりでは、住民、高齢者、若者、女性、子ども、etc.といった表現でターゲットが語られることが多いため、どのような意識や行動の変容が起きるのかが抽象的過ぎて描けないのです。また、人によって具体的なターゲットの人物像が異なっていることが多いため、議論をしてもなかなか噛み合わず、話が前に進まないということが起きてしまいます。あらためて設計図の作成には、ターゲットを明確に設定すること、そしで可能であれば「ペルソナ(あたかも実在するかのような具体的な人物像)を設定することが不可欠なのです。

 

 

地域づくりの設計図(ロジックモデル)は作成にあたっては、以下のチェックリストを活用しながら、それぞれの項目について正しく整理できているかを確認していきましょう。

 

<ロジックモデルのチェックリスト>

◾️資源投入

◻︎必要な資源が満遍なく、偏りなく、洗い出されているか?
◻︎投入する資源はどこから獲得するのか明確になっているか?
◻︎投入する資源の量は十分か?

◾️事業

◻︎事業の目的や成果、ゴールは明確になっているか?
◻︎事業の主たる対象者とそのニーズは調査等で明らかにされているか?
◻︎事業の内容は自分たちがやりたいことではなく、対象者に寄り添ったものか?
◻︎実施する事業は、振り返りをしないまま、単なる前年踏襲になっていないか?

◾️結果

◻︎事業の広報や集客のタイミングはターゲットを意識しているか?
◻︎事業の広報手段(媒体選定やデザイン等)や告知量は適切かつ十分なものか?
◻︎事業実施の人員体制や運営、役割分担は適切か?

◾️成果

◻︎最終的な成果創出に向けて、短期・中期・長期のステップが描かれているか?
◻︎成果創出の流れが論理的で飛躍もなく、関係者間で納得のいくものになっているか?
◻︎指標(ものさし)や具体的な目標値、期限等が設定されているか?

◾️ビジョン

◻︎そもそもビジョンが掲げられているか?
◻︎ビジョンは関係者間で合意され、納得のいくものになっているか?
◻︎ビジョンの内容は、“抽象的過ぎず&具体的過ぎず”の内容になっているか?
◻︎対象者(住民等)にとって、実現意欲の湧くような魅力的な内容になっているか?

 

ここから先は、個々の団体で引き続き、設計図の完成に向けて取り組んでいくことになります。今回の設計図の作成における議論や対話でも言えることですが、第1回目講座で実施した合意形成と話し合いの力を常に意識し、お互いに本気・本音・本心で話しながら、設計図を完成していただきたいと思います。そして、この講座での学びを踏まえ、これまでとは違う視点や手法による地域づくりの計画策定が進むことを願っています。

 

 


県が主催するこの事業の目的は、人口減少、 少子高齢化が進む中山間地域において、生活機能の維持や地域課題の解決に重要な役割を果たしている地域運営組織等の団体や支援に関わる関係者が、活動の“想い”を言葉にし、“成果”を見える形で示しながら、共に目指すビジョンを描き、周囲と共有・連携していく力を身につけることを目指すというもの。具体的には「ロジックモデル」の手法を学び、地域づくり計画を策定していきますが、その土台ともなる団体内部や関係者間での合意形成や話し合いの進め方にも着目し、コミュニケーションの基本やファシリテーションの視点も学ぶことで団体内の関係性や意思決定のあり方を見直していきます。

■第1回(9月7日):合計形成と話し合いの力を高める

地域団体の活動においては、「計画や目標を一部の人だけで決めてしまう」「意見が出にくい」「話し合いが一方通行になる」といった課題がしばしば見られます。第1回では、活動を支える土台としてのコミュニケーションの基本とファシリテーション(合意形成)について学び、団体内外での対話の質を高める方法を実践的に考えます。

■第2回(9月28日):ビジョンを描き、活動の意味を見つめ直す

地域で活動を続ける中で、「そもそも自分たちは何のために活動しているのか」「将来どうなっていたらうれしいのか」といった“思い”を言葉にする機会は意外と少ないものです。第2回では、こうした活動の原点に立ち返りながら、団体のビジョン(目指す地域の姿)を明確にし、活動の背景や意味を整理していきます。

■第3回(12月21日):ロジックモデルを活用し、活動を“見える化”する

これまでに整理したビジョンや話し合いの成果をもとに、団体の活動を「ロジックモデル」(地域づくりの設計図)の形で整理し、発表・共有を行います。ロジックモデルは、活動の流れや成果を一目で把握できる図式化ツールであり、団体内の共通理解の形成や、支援者・住民への説明、計画づくりに役立ちます。