BLOGブログ

『まちカフェ!』にみる協働のカタチ

2021年01月27日 事業レポート

当方が事業統括アドバイザーを務める、町田市地域活動サポートオフィスが事務局を務めた第14回町田市市民協働フェスティバル「まちカフェ!」が盛況のうちに終了しました。

まちカフェ!」は、町田市内で活動するNPO法人や市民活動団体、地域活動団体(町内会・自治会)などが、お互いの活動を知り交流を深めスキルアップをする場として、そして参加した市民の皆さんには地域で活動するきっかけづくりになることを目的とし、2007年から開催しているイベント。例年は町田市庁舎での1日限りで行うイベントですが、今年はコロナ禍の影響により2020年12月4日(金)~12月13日(金)の10日間にわたり、30を超えるオンラインイベントや市内分散開催の対面イベントを組み合わせた新しいスタイルにチャレンジしました。

 

 

どのような実施形態で開催するのかということは実はそれほど重要ではなく、大事なのは、これまでは協働とは謳っているものの一過性のイベントにとどまっていたという点です。サポートオフィスが市役所とともに事務局を担うことになったこともあり、あらためて「協働イベントとはどうあるべきか?」、「そもそも協働とは何か?なぜ必要なのか?」を問い直すとこから始めました。地理的範囲や対象者数などが限定された小規模の社会課題や原因が明確で単純な社会課題であれば、一組織によって解決が可能ですが、現代の複雑化・相互依存化した社会においては、単独の組織や個人による取り組みだけでは限界があります。かつ、一時的な対症療法ではなく、根治療法を目指すのであれば尚更のこと、多様な主体が協働して事に当たる必要があるのです。見方を変えれば、自分たちが掲げたビジョンの実現やゴールの達成に向け、一人ではできないということを自覚するところから協働は始まっていくということです。

 

<協働の条件>

■取り組む社会課題の実態を把握していること
■何を目指すのかというビジョンやゴールが明確で、かつ実現への強い想いがあること
■ビジョンの実現は自分たちだけでは不可能だということを認識できていること
■社会課題の実態とビジョンが関係者間で共有されていること
■関係者ごとに異なる立場や主張があるのは当たり前で、それぞれの想いが重なるところを探求する姿勢があること
■自分たちの強みも弱みも開示できるオープンさがあること

 

こうした協働の意味や必要性、条件を整理・理解しつつも、“協働は一日にして成らず”です。

関係者それぞれの意図や思いには温度差があり、スキルや専門性のレベル、アプローチ方法も違い、さらには目指すゴールの高さもそれぞれです。これらの前提を度外視していきなり協働が実現するわけではなく、いくつかのステージを経てようやく協働というゴールに辿り着いていきます。

【ステージ①:単独】他者とのつながりはなく独立・孤立している状態。意図的に他者と距離を保つケースも、つながるための情報や手段が不足しているケースもある。
【ステージ②:交流】イベントやセミナー、SNSサイトでの出会い、知人からの紹介など、何らかの交流の機会をつうじて個人と組織、組織同士が知り合っていく。
【ステージ③:協力】単なる顔見知りから一歩踏み込んだ関係性が構築され、お互いの強みや弱みを認識しながら、双方が有する経営資源を融通(ギブ&テイク)し合う。
【ステージ④:協働】共通の目的を掲げるとともに、その目的の達成に向けてそれぞれの役割を分担しながら、対等な立場で自主・自律的に関わっていく。

 

 

イベントであれ期限付きのプロジェクトであれ事業であれ、従来の協働促進に向けた動きでは、こうした流れを無視して、いきなり、そして無理矢理に協働を働きかけたり、仕掛けることが多かったのではないでしょうか。関係者それぞれがどのステージにいるのかを事務局(協働コーディネーター)が丁寧に見極め、必要な場づくりを行わなければ空中分解してしまいます。

「まちカフェ!」でのサポートオフィスの大きな仕事の1つとして、全ての参加団体とボランティアで構成される「まちカフェ!実行委員会」の主催があります。5月以降の約半年にわたり、毎月第3木曜日にZOOMでミーティングを実施し、企画について検討したり、参加団体同士の関係性を深めてきました。協働コーディネーターの立場として上述の協働の流れを意識しながら、参加団体がそれぞれどのステージにあるのかを見極めつつ、ZOOMのブレイクアウト機能を活用しながらお互いの活動内容や人となりを深く知り合うためのワークショップ、単なる活動の紹介にとどまらず、強みや弱み(得意なこと・苦手なこと)を明らかにし共有するための『まちカフェ!協働ガイドブック』づくり、悩みやアイデアを出し合うSNSサイトの開設、全体をサポートする学生を中心とした応援隊の創設などを組み合わせながら、単独⇒交流⇒協力へと段階的にステージを進めていきました。そして最後には、参加団体から自発的に声が上がり、町田市の子どもの未来と具体的なアクションを考えるという共通の目的を掲げた、「まちだ子どもアクション」の立ち上げに辿り着きました。本格的な協働の展開はまさにこれからですが、単なる一過性のイベントではなく、お互いが関係性を深めながら共通の目的に向かって協働していくという流れの原型を生み出すことができたと思います。

 

 

 

協働については、歴史的には1998年のNPO法制定と前後して市民参加や協働に関する制度や条例などが定められてきており、その言葉自体は既に社会に浸透しているといっても過言ではないでしょう。その一方で、一緒にイベントや調査、単発のプロジェクトを実施したり、協賛する(名前を貸す)くらいにとどまっているケースが多いのが実態です。その理由は様々でしょうが、協働の関係者が協働の意味や必要性を理解しておらず、お互いの立場や都合を主張することに終始するために一過性の表面的な協働関係に終わることが多いと思われます。さらに、そうした関係者同士の関係性をファシリテートする協働コーディネーターが機能していないということも大きな要因の一つでしょう。結果として、協働に対しては苦い思い出しか残らず、また一緒にやろうという気持ちになれないのも無理はないですね。

年明け1月22日には、オンラインでの開催となりましたが、お酒を片手に「まちカフェ!」アワードの表彰やゆるいトークなど懇親会を開催。「まちカフェ!」がお互いの協力ナシには実現しなかったことを認知し、お礼を伝えながら、無事終了したことを祝福し合いました。協力や協働関係の構築や継続には、こうしたお互いに対する感謝の気持ちを見える化し、口に出して直接伝え合うことが大切です。

こうして振り返ると、「まちカフェ!」の本質的な価値はイベント本番というよりも、本番に至るまでの6ヶ月にわたる準備期間といえます。一過性の単発イベントをやってお終いということではなく、作り上げるプロセスの中でお互いに学びながら、お互いのことを知りながら、共通のゴールを明らかにしながら新たな協働プロジェクトを立ち上げていきます。

”協働は一日にして成らず” ですが、確実に実現できるもの

そんな実感を抱いています。折りしも、米国版の協働であるコレクティブ・インパクトも日本で着実に広がりつつあります。来年はさらに大きな協働の舞台を用意したいと思います!